大阪地裁 平成29年4月10日 平成27年(ワ)第7787号 損害賠償等請求事件
過失の推定が覆滅した事案
「観光甲子園」の商標権を有する原告が、その名称を使用して,高校生が参加する「観光プランコンテスト」を第1回から第
6回まで共催校として開催してきたところ,被告が,共催校を承継したとして,原告に無断で,ホームページにおいて同登録商標を使用して同商標権を侵害するとともに,後継の大会として第7回の同コンテストを宣伝,開催することにより本件商標権の価値を毀損したことが不法行為を構成すると主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償等を求めた事件
本件では、裁判所はまず、「被告がホームページで本件商標を使用した行為については,前記のとおり,商標権侵害を構成するから,過失が推定される(商標法39条,特許法103条)。」
とした。また、裁判所は、過失の推定が覆される要件として、以下を示した。
「ところで,商標権侵害について過失が推定されることとされた趣旨は,商標権の内容については,商標公報,商標登録原簿等によって公示されており,何人もその存在及び内容について調査を行うことが可能であること等の事情を考慮したものと解される。このことに鑑みると,侵害行為をした者において,商標権者による当該商標の使用許諾を信じ,そう信じるにつき正当な理由がある場合には,過失がないと認めるのが相当である。」
裁判所は、原告・被告間の事実関係を示し、
「 以上からすると,原告が本件事業を継続することが困難となった中で,原告側の種々の行動の積み重ねにより,被告において,原告が組織として被告を共催校とすることを了解していると考え,被告が第7回大会を行うために必要な事項については原告内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信じることは極めて自然なことであったというべきであり,このことに疑いを生じさせるような事情が存したとは何ら認められない。」
とし、さらに、
「(エ) 以上からすると,被告には,原告から平成27年5月に本件商標の使用を指摘されて,その買取りを求められるまでの間,ホームページに本件商標を使用するに当たり,本件商標権の移転に関する原告の理事会決議に先行して本件商標を使用することを原告からあらかじめ許諾されており,必要な事項については原告内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信じ,また,そう信じるにつき正当な理由があったというべきであるから,被告による本件商標の使用には過失がなかったものと認めるのが相当である。」とした。